SMSアイ-ソリューション > ブログ > 北陸富山あれこれブログ > 手作りパネルで心温まる高岡古城公園の愉快な動物園
2017年08月02日
いつか子どもが生まれたら、ベビーカーを押してわが子と動物園へ行こう。平凡ですが、そんなささやかな夢を抱いていました。そして秋が深まるころに初めての出産を経験し、1カ月ほどたってようやくお出掛けができる頃、悲しいことに季節は冬になっていました。
寒さが骨身にしみるので、冬はひたすら家に引きこもって子どもの世話をする毎日。ささやかな夢は春までお預けとなり、日差しが温かくなるのを待ってようやく動物園デビューがかないました。
行き先は高岡市の高岡古城公園内にある動物園。「子どもがちょっとやそっとで風邪を引いたりしないように免疫を高めるには、動物園へ連れていくのがいい」と本気か冗談か分からない助言をする母に見送られ、意気揚々と出掛けたのでした。
(写真引用:高岡古城公園動物園|観光スポット|とやま観光ナビ)
高岡古城公園は、1609(慶長14)年に、加賀藩2代藩主の前田利長によって造られた高岡城の跡に整備されています。高岡城の設計をしたのはキリシタン大名でも知られる高山右近。学校の日本史の授業で習った時はキリスト教をひたすら熱く信仰する戦国武将のイメージしかありませんでしたが、お城づくりのスキルもピカイチで、当時は築城の名手としても名を馳せていたそうです。
今で言うと、2020年の東京五輪のメーンスタジアムである新国立競技場の設計を手掛けた建築家・隈健吾氏のような活躍ぶりだったのでしょうか。
そしてこのお城は1870(明治3)年に民間に払い下げとなりましたが、立派なお城があったことを後世に残そうと地元の人たちが奔走し、高岡古城公園となったのです。重厚な水堀に囲まれた緑豊かな公園は、県内有数の桜の名所としても知られ、高岡のシンボルのような存在です。
そんなお城の中にある動物園は1951(昭和26)年に開園。高岡市が管理しており、子どもたちに大人気にペンギンやカピバラ、ウサギといった多種多様な哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類の42種135点(2017年7月1日現在)を飼育しています。
入園料はなんと、無料。動物の種類も数も比較的充実しているうえに、この良心的な設定に、商工業の街として栄えてきた高岡商人の心意気、気風の良さを感じてしまいます。お金をかけずにお出かけを楽しみたい子ども連れには、ぴったりの場所です。
動物たちはいつも元気いっぱい。動物園の入り口に近づくと、威勢の良いサルや鳥の鳴き声に出迎えられ、お天気のいい日は、高岡古城公園の敷地内を散歩するアメリカンミニチュアホースに遭遇することも。お堀り沿いの道をアメリカンミニチュアホースが歩く光景は、そのミスマッチ感に思わず笑みがこぼれます。
高岡城は、家督を義弟で3代藩主の利常に譲った利長が、余生を過ごすために築城したお城です。とはいえ、有事の際には加賀藩の軍事拠点としての役割を果たすことも期待されていたおどろおどろしい面もあります。
「日本100名城」にも名を連ねています。そんな歴史と格式を誇る城内を、まさか、約400年後にアメリカンミニチュアホースがのびのび闊歩しているとは、きっと利長も驚いているに違いありません。そしてそののどかな光景にニンマリし、幸せな笑みをたたえているかもしれません。
利長は関ケ原の戦いなど、数々の大戦を生き抜いてきました。泰平の世を強く望むからこそ、必死で戦ってきた人生です。そんな激動の時代を生きた利長にとって、異国の馬が日本のお城の中を歩く様子は平和そのものとして映るのではないでしょうか。
利長が願っていた平和な光景は、現代の私たちにとってもほっとする光景です。初めての子育てに忙殺され、すさんでいた私の心も解きほぐしてくれました。
さて、この動物園の見どころは、「お城」での生活を満喫する動物たちを見るのはもちろんですが、もう一つ注目したいのが、園内で飼育されている動物の生態や性格を紹介する職員手作りのパネルです。人気アニメやタレントなど、旬のネタを題材にユーモアたっぷりに作られており、インターネット上でちょっとした話題になっているのです。
訪れた日、まず目に入ったのは、ペンギンがいるプールに張られた一枚です。イケメン2人を引き連れ、キャリアウーマンのネタで人気急上昇のお笑い芸人・ブルゾンちえみをを思わせるイラストを取り入れ、ペンギンプールに映る自分の影を揺らすと、ペンギンがその影を魚と間違えて寄ってくるかも、とアドバイスしています。女性の皆さん、男性よりも、ペンギンに寄ってこられた方が癒されるかもしれません。疲れがたまっている時は、ぜひ試してみてください。
そしてフラミンゴやカモなど水辺の鳥が集まるフェンスの前では、飼育されているオシドリにちなみ、おしどり夫婦の由来をアメリカ出身の芸人・厚切りジェイソンふうに解説するパネルを発見しました。鋭いツッコミはオリジナルに負けていません。たたみかけるような語り口が聞こえてきそうです。
ほかのパネルでは、シカの角やクジャクの羽が一年でどんなふうに生え変わるかを解説したり、ヒツジの特徴をクイズ形式で紹介するなど、子どもだけでなく大人も「へー」と感心するような深い知識が満載です。専門的なことも簡単な言葉や分かりやすい表現で書かれているので、読んでいて飽きません。
そして生態もさることながら、個々の動物の性格も面白おかしく紹介しています。例えば、オスとメスを飼育する鳥のハッカンについては、メスに想いを募らせるあまり、昼ドラさながらの仰天行動に出るオスの心の声を「俺の愛は重いのかー?」とパネルで主張。
人間の世界も鳥の世界も、恋愛はなかなか思うようにはいかないのかもしれません。
パネルのイラストは飼育員の手描きで、愛らしい絵が柔らかいタッチで描かれています。文章には「~け」や「~しとる」と、富山弁も随所にちりばめられ、読んでいると動物への愛着がいっそう増していきます。
パネルは、今その時の話題をネタに、度々新作が登場するとのこと。読めば読むほど動物のことだけでなく、飼育員と動物たちの絆の強さや信頼感が伝わってくるようで、とても温かな気持ちになります。
肝心のわが子は、果たして動物に興味を示してくれたのかと言えば、生後7カ月にはまだ少し早かったようです。動物をじーっと見続けることはできず、周りの景色を見渡したり、お昼寝が始まったりと、マイペースにお出掛けを楽しんでいました。そして何より、子どもの体の免疫力が高まったのかどうなのかは謎のままです。でもささやかな夢がかなったので、今回はそれで良しとします。
動物を見て楽しみ、パネルで心癒され、うまくいかない子育てにあれこれ悩んでいたことも忘れてしまいました。そして湧き上がるのは明日からも頑張ろうという希望です。
もしかしたら、藩主という現役を退き、余生を送ると言いつつも、加賀藩のため、民のために高岡城を拠点にいっそう力を尽くそうと利長は希望に燃えていたのかもしれないと思うのは大げさでしょうか。本人に真意を聞くことはできませんが、高岡古城公園とお城の中にある動物園は、気持ちが晴れやかになる素敵な場所でした。
高岡古城公園動物園
富山県高岡市古城1-6
開園時間 午前9時~午後4時半
休園日 毎週月曜日
※月曜日が祝日の場合は、翌火曜日が休園
お子さん連れの方へ
動物にさわることができる「ふれあい広場」や遊具もあります。園内には授乳室があるので、小さいお子さんが一緒でも心配要りません。
■writer:子蟹
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